発達障害は治癒するのか?

なんかTwitterでの私のTLで話題になっていたんですが、140文字では書ききれないテーマです。

まあ医療関係者の場合、慣用的に治療をして治らなかった部分を「障害が残った。」と表現することが多いと思います。

障害=治らない。

治療の対象を離れて、リハビリにまわすわけです。

でも、リハビリは治療じゃないのかと言えばそんなことも無いわけで。


で、さらにこれについて書くには私が障害という言葉をどうとらえてるかまで戻らないといけません。

私は障害をWHOの分類で考えてます。


・ 機能障害(impairment)

・ 能力障害(disability)

・ 社会的不利(handicap)

機能障害はたとえば下肢が麻痺してるとかです。

能力障害はそのために歩けないってこと。

社会的不利はそのため一人で移動ができない。


で、機能障害をどうにかするにはリハビリです。訓練して少しでも動かせるように。

または代わりに麻痺してない部分をきたえておぎなえるようになど。



能力障害をどうするかといえば、車椅子とか松葉杖がを使ったら歩けるかもしれません。


そして社会的不利については車椅子でもどこへでも行けるバリアフリーの街の実現とかなわけです。


障害って言葉を言い替えようとかいう意見は何の意味もないと思います。

むしろ障害とは何か、障害を取り除くにはどうすべきかって考えないと。

少なくとも機能障害が回復不能でも、社会的不利を取り除くことは理論上は不可能ではないでしょうから。



そんでこんどは本題の「発達障害」。

これは小児期に発達障害の診断を受けていながら、成人した頃には障害無しって診断になる場合があります。

障害を治らないものと定義する人たちにとっては、これは小児期に誤診されていただけだってことになります。

治った場合をすべて最初の診断が誤診だったとするならば、これは治った例は1例も無いってなりますよね。(笑



で、こっからが私の勝手な考え。

今のところ発達障害は障害の部位も原因もちゃんと判っていません。

判ってないから、障害部位を根本的に治す方法だって判っちゃいないと思います。


でも、場合によっては訓練しだいでは特に知的障害のないタイプの発達障害の場合には健常者と変わらない状態になる場合もあると思います。


functional MRIなどの報告で高機能の自閉症者では健常者が側頭葉で処理する情報を前頭葉で処理していたという発表を見たことがあります。

これはたぶん損なわれた部分を使わず脳の別の場所で処理して補っているのでしょう。

そして普通の場合、人が脳内で情報をどう処理してるかなんてブラックボックスなわけです。

何かの刺激に対して健常者が起こすであろう反応を自閉症者が学習して健常者と同じ反応をすれば、それは見かけ上は「治った」と見えるでしょう。

発達障害児に対するSocial Skill Trainingなんかはまさにそうですよね。

共同注視や RDI(Relationship Development Intervention)なんかも同じような訓練になるのだろうと思います。

RDIにはevidenceが乏しいような気もしますが、結局は実践としては健常者に注目して反応を真似るという意味があるのじゃないかと思います。



普通の発達をするこどもが特に意識することなく身につける技能ですが、それを小さいうちから訓練して学ばせる。

もしかしたら健常児とは違うやり方で処理してるのかもしれないけど、見かけ上は同じようにリアクションすることを学ぶ。

失われた機能を回復させてるのか、失われた部分ではないところを鍛えておぎなってるのか、ブラックボックスだけどこれは「治る」に限りなく近いのではないかと思います。

もちろん障害が重い場合には限界があるでしょうが、それでもなんらかの改善はあるんじゃないかと思っています。



療育はリハビリに似ていると思います。

ただし決定的に違うのは、リハビリをする人はかつては自由に動けていた自分というイメージがあって、それを目標にがんばれるということ。

でも発達障害の場合には本人には障害のない状態の自分というイメージはなく、訓練に目標が持ちにくいということ。

それでいて親には子どもによくなって欲しいという強い願望があります。



でももちろん限界はあるのです。

伸びるタイプもゆっくりさんもいるのです。

しかも日本ではきちんとした療育が公費で提供されることはなく、すべては親の負担であり伸び悩む場合は親が落ち込んで潰れたりします。



そこのところをどうするか?



発達障害を治らないと決め付けて諦めるのは違ってる。

発達障害を治ると言って治せないのを怠慢だというのは違ってる。




機能障害(impairment)をできるだけ改善するように療育(個人的には応用行動分析を用いて)。

能力障害(disability)をおぎなうための構造化、カードなど使った視覚支援など。

そして社会的不利(handicap)を減らすための人の意識の変化、必要な支援が受けられるようにすること。


せっかく乳児検診、幼児検診があるんだから、その後を「経過観察」という名の放置にしないこと。


いつの日にか検診で発達障害が疑われた子に公費で適切な療育が提供される日が来ることを願っています。





さてと私のMMDの新作は今回の真面目な話にはまったく不向きですが、一応貼っておこう。

我ながらひんしゅくだなとは思いつつ。(笑

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