裸の王様。

大学病院の医局による研修とその後の人事権って何だったのか?

きっと多くの人には見えてなかったんだと思います。

実はものすごく強固なものという思い込みだけで成立してた「裸の王様」

でも臨床研修制度が変わって新しく卒業した若者ははじめから王様が裸なことが判ってました。

だから厚労省がもくろんだより早く医局制度が破綻してきたのでは?



でも医師を計画的に配置しやすくするために根無し草にする計画が、医局の支配を離れた医者はもっと扱いにくいもので、しかも根無し草になるのは新しい人間のはずだったのに、腕に自信の或る中堅医師のフリーエージェント制みたいな状態を引き起こした。

これはたぶん厚労省の計算外だったのでは?



研修制度を手直しして研修医を大学に戻しても事態はたいして改善しない気がします。

人手不足の原因は王様が裸だってことを言ってもいいんだってこどもから教えてもらった大人達。



実を言えば私はその恩恵に預かってる身です。(笑

自分から外に出たわけではなく、戦力外通知くらったわけですが、退局したわけでは無く手伝いにバイトはよこしてもらっていたりして。

しかも医局の人手不足は判ってますが帰る気はありません。

以前なら声がかかったかもしれませんが、今は無理に戻そうとすれば辞めるだけだって判ってるから好きにしてもいいよ状態です。



ま、個人的には医局体制の崩壊で助かってる面はあるのですが、やっぱり新人さんたちの研修を考えると問題有りすぎだと思います。



細切れの研修はどうしてもお客さん扱いになりがちです。

医者を育てるのはものすごく手間がかかること。

未熟な子に何かをやらせるには目が離せません。

患者さんに不利益なことが起きないようにしないといけないわけだし、もちろん自分でやっちゃったほうが早いわけだし、そこを忍耐してやらせる、しかも失敗させないようにする。

軽い失敗なら痛い目にあって学べよで済みますが、大きい失敗は取り返しがつかない場合もあるわけですし。


で、何でそんな面倒なことをするかと言えば、ちょこっと先輩の場合は後輩ができてうれしいから。

先輩風を吹かせながら、こっそり予習をして前からそんなこと知ってたみたいな顔して後輩に教えたり。

これは自分の知識を高めるためにもなります。

屋根瓦方式で効率よく教育できます。



もうちょっと上の人は下が育つと自分が楽できるから。

早くひとり立ちして戦力になってくれよ~って思います。


でも今の研修制度では自分ちの子じゃないので、教える側のモチベーションが下がります。

ちょこっと来て去っていくのに、教えるだけ無駄って気になっちゃいかねません。




私は医局の歴史に名を残しかねないほどのダメ研修医で入局一年目にストレス潰瘍で入院しました。

でもあの子だけは指導したくないと言ってた(と、後年他の先輩から聞かされた。笑)先輩があきれながらも根気強く指導してくれて、始めての国際学会から結局は学位まで全部お世話になりました。(いまだ頭あがらず....感謝してます。)




そして今、先輩も後輩も医局を離れ、それでも交流は有ります。

今の職場で忙しいと愚痴れば専業主婦になった後輩から子どもが幼稚園に行ってる時間だけでもお手伝いに行きましょうかと電話がかかってくるとか。

先輩から人を紹介してもらったり。(ありがとうございます!!人材派遣会社に手数料払わないで済んだ~!!



医局制度の同じ釜の飯を食った(ともに奴隷働きをした?)仲間の関係。

運動部の部活のような理不尽さとえたいのしれない連帯感。(笑



ある意味、人脈も財産かなと思います。



後期研修にしても医局をベースにした研修は関連病院への派遣などを通じて行われる傾向がありました。

関連病院の部長クラスに医局のOBがいて、修行を兼ねた派遣。

大学にいると経験できる症例が限られますが、派遣先ではどんどんいろんなことをやらされて手技を学ぶ。そしてその指導は同じ医局の先輩なのである程度の一貫性があったり。

お給料の安い公立病院への派遣なども、仕事というより修行の側面があれば待遇の不満は出にくいということがあったと思います。



うまくいかず教授の機嫌を損ねて条件の悪いとこへ派遣されたりとかいう被害もあったとは思いますが、基本は派遣先の病院の人手がうるおい、派遣された人も修行できお互いにメリットがあることが多かった気がします。



しかも大概2年。

地方の病院などに行かされても2年すれば戻ってこられます。

そしてすごくセコイ話しですが、派遣してもらった病院は退職金を払わないで済むんです。(笑

たいがいの職場が退職金を払うのは3年目から。

2年で若くて人件費の安い人手が回ってくるシステムは病院経営にとってはおいしかったと思われます。



今、医局からの派遣が足りなくなって人を募集しても、無期限でそういうとこに行くのはどうもという人が多いと思います。

しかも募集するほうでもとんでもないのが来たらアチャ~です。(笑

医局からの派遣の場合はあまりにそこの病院では使えない人材が来たら、医局に頼んで交替してもらうという手がありました。

でもそれも使えません。

お互い危険がいっぱいです。(笑




医局人事のよい面だけを残して悪い面を改善するのは難しかったんでしょうね。

でも医局が裸の王様であることがバレてから、あわてて服を着せようとしても威厳は戻りません。



こうなれば開き直って立派な衣装を着ているから王様が偉いのではない!!

裸であれ王様という存在が偉いんだ!!って言えるくらい、大学が臨床だけじゃなく、教育も研究も出来る場に戻れるといいですね。

真逆に向かってて崩壊しつつあるけど。


研修の質が落ちれば明日の日本の医療の質が落ちるわけで、医療費は節約~ってか?

誰の望みなんですかね?